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あれから十年が経ち、僕は十八歳になった。
十年経った今でも妹は見つかっていない。
母は仕事の合間や休みの日に妹の行方不明の紙を配り歩いており、僕も部活帰りに行方不明の紙を配り歩いていた。
しかし、何年、何日経っても妹の所在を掴む事が出来なかった。もうどこかで死んでしまったのではないかと親戚の人達は頻りに言っていたが、母も僕も諦めるつもりはなかった。
そんなある日、駅前で行方不明の紙を配っていた僕に、ある年配のおじさんが話しかけてきたのだ。
「この子に似た子なら五年ぐらい前に会ったわい。私は確かに覚えておる」
「それって本当ですか?」
僕は嬉しさのあまり、そのおじさんの肩を掴んでいた。
この話が嘘であるという場合があるが、一先ずは話を聞いておきたい。嘘でも、その言葉を聞けただけで嬉しい。そう思ったからこそ、僕は、おじさんの話に耳を傾けていたのかもしれない。
驚いたおじさんは首を縦に振ると、
「もちろんだとも。私は記憶力が良い方でな。確か、私の弟の親戚の水無月(みなづき)さんという方が震災で拾った子供を育てておるよ。五年ぐらい前だったか、弟と一緒に水無月さんのお宅に訪れた時に、その紙の女の子に似た子を見かけたわい」
僕の目からは自然に涙が零れ落ちていた。
「……生きてた……本当に、生きてた……」
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