銀の板

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キラリと胸元に光る小さな銀の板…ドッグタグ。 彫りこまれているのは、大抵、名前…。 戦場という非日常な場所で、自分の存在を示す唯一のもの。 愛する人達との幸せな日常を繋ぐ、唯一の物。 そして、愛する人達のもとへ、戻るために必要な…これは、切符。 今、私が、生きているこの場所は、そんな戦場じゃない…。 じゃあ、なんのために、この銀の板は、私の胸元で、光っているの? 1枚目のタグ、表には、可能性(Possibility)、裏には、私の名前が、彫り込まれている。 2枚目のタグは、四つ葉のクローバーの透かし彫りのタグ。 「梢、いつか、お前だけの王子様が、現れるまで、これが、護ってくれるからな…。」 「これは、お守りだから、絶対に、外しちゃだめよ、梢。」 小さい時から、何度も何度も、言われ続けた言葉…。 疑いもせず、私は、真っ直ぐに、信じ続けてきたんだ、パパとママの言葉を…。 このドッグタグの力を、ずっと、信じ続けてきたの…。
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