銀の板

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それは、自分の胸元に、いつもあって、キラキラ光っていた。 これに、ドッグタグという、名前があって、戦場に立つ兵士達の身分証明書なんだと、知ったのは何時だったかな? なにかあると、私は、このお守りを、握り締め、お祈りしていた。 友達に、これが、お守りなんだと見せると、それは、お守りじゃないと、否定されることの方が、多いかな。 普通の人は、これは、只のドッグタグを模したアクセサリーだと、思うみたいだ。 そう言えば、そのことで、私は、中学校時代、生活指導の先生に、ずっと睨まれていたっけ…。 あれは、中学へ進学してすぐのある日の体育の時間…。 「亀山、これは、なんだ?…学校には、アクセサリーは、着けてきては、いかん決まりだろう! 没収だ、外しなさい!」 「アクセサリーじゃありません!これは、お守りです!」 「どこが、お守りなんだ!?…誰が、どう見たって、そりゃ、ドッグタグだろう。 親が、軍人で、これが、形見だとか言うなら、まだ、説得力あるがな、今の日本じゃ、自衛隊隊員でさえ、本当の戦場に立ったことないんだからな。あり得んだろう。 さあ、さっさと、外せ、亀山。」 「嫌です!!…これは、私のお守りです! パパが、絶対、外すなって、言ったんだもん! パパが、お守りだって、言ったんだもん!」 先生の外せって言う命令と、絶対に外さないって、頑なになってしまった私との言いあいで、その時間の体育は、なくなってしまった…。 もちろん、親が、呼び出しを喰らったのは、言うまでもない。 パパとママが、来るまで、私は、生徒指導室で、体操着のまま、一人、待たされていた…。
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