銀の板

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「おい、学校に呼び出しって、梢は、何やらかしたんだ?」 「知らないわよ…いきなり、『生活指導の桐山ですが、お嬢さんのことで、少しお話があります。学校まで、ご足労いただけますか?』って、言われたのよ。 あなたを、連れていくほどのことじゃないと、思うんだけど…。」 「たいしたことじゃないと、いいんだけどな。 親が呼び出し喰うときは、録な話じゃない。」 「…あなたの経験から?」 「そうだよ。俺の経験。学校に、何回、母さんを、呼び出されたことか…その度に、家族が軋んで、壊れそうだった…。 まあ、梢は、俺と違って、自分の気持ちを、きちんと、表に出せる子供だから、俺みたいな間違いは、少なくとも、起こす可能性は、低いと思うがな。」 「間違いって…。」 早苗は、助手席の夫、洋祐とは、大学で知り合った。だから、それ以前のことは、彼が、話してくれるまで、何も知らなかった。 付き合い始めて1年ほどしてから、高校生の頃の彼が、一時期、闇の中に迷っていた話を聞いた。 親の不仲が、原因で、家の中が、荒んで、バラバラになっていく… 居場所のない子供は、似たような境遇の仲間を見つけ、集まっていく… 洋祐は、その真っ只中にいたのだ。 だから、自分の子供には、絶対、そんな思いは、させたくないと、愛情を込めて、大事に育ててきたのだ。 そして、自分の様に、何も言えない子供では、ダメだ…そう思って、自分の意見を、しっかり、主張出来る子供になれるように、導いてきたのだ。
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