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《ウイルス》
その日輪島は捜査の手を緩めること無く事件現場の女子校の事情聴取に余念が無かった。しかし、手掛かりになる要素は見出せなかった。かくなる上は唯にもう一度会い、サイトの事、あの時カラオケ店で目撃したものを聞くしかない。
次の日10:00位に輪島は唯の家へ天山と訪れた。その日も母親が対応してくれた。しかし唯は入院しているという。
自殺事件以来食事も摂らず日に日に体が衰えて来たからだと言う。母親から入院している病院名を聞き出したが。母親はなるべく唯をそっとして欲しいと頼んだ。もう終わってしまった事なのだから唯の母親の気持ちも良く分かる。しかし輪島の正義感は9人の犠牲を放っておくことは出来なかった。
その足で唯の入院する病院へと向かった。
病院は唯の自宅からはたいして離れてはいない場所に在った。京阪電車樟葉駅から枚方に行きそこから5分程の場所にあった。敬愛会黎明病院、規模的にはさほど大きくない総合病院だった。
唯の病室は5階の個室だった。肉体より精神的なダメージが大きかったのだろうか、個室をあてがった唯の両親の配慮が伺えた。入院し点滴を受けた唯は幾分か元気を取り戻しているようだった。
唯の部屋を訪れた輪島と天山の姿を見て一体誰という顔をしていた様子だったが、
「どうも、先日ドア越しに話をした者です。」と言う図太い輪島の声を聞き、すぐ思い出したようだった。
「少し話を聞きたいんやけど、体の方はもう大丈夫?」
「はい。」と小さく頷く。
ただ口にはしないがクラスメートの自殺の一件には触れられたくないというそぶりを感じた。しかし、輪島は容赦せず質問を始めた。「君の気持ちは良く分かるんやけど、僕としては自殺だと済まされへん。君だって友人の死が不自然だと気付いてるはずやよね?」
唯は暫く沈黙していたがうつむいた侭うなずいた。協力してくれるようだ。
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