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輪島はその同じ課の人物が佐伯であろうとすぐに分かった。佐伯はサイトを作成したものが催眠を掛ける機能をサイトのグラフィック等に仕掛けていたのだろうと判断したのだろう。輪島は山下に聞き、由美子の会社に飛んでいった。
会社の入っているビル入り口に山下と由美子が立っていた。ハンカチで汗を拭き拭き輪島が走ってくると、「とんでもないとばっちりだわ。」と由美子がかんかんになって怒っていた。
佐伯は既に事務所の中で押収物に見落としが無いかチェックに入っていた。事務所の中に飛び込んで来た輪島の姿を見て、佐伯は親指を突き立てて「チェックメイト。」とにゃっと笑った。俺の方が一枚上手だと言わぬとばかりに。
「ちょっと待ちーや!」輪島は佐伯に怒鳴った。
「もし、この会社の責任やなかったらどないするつもりや。」
「捜査迅速第一だよ。」とわるびる所も微塵も無くすまし顔で言った。輪島はこの場で佐伯を一本背負いで投げ飛ばしてやろうかと思った。
「まあまあ、押さえて輪島さん。」と同期の大前が割って入った。理由はどうあれここで佐伯の邪魔をすれば輪島とて公務執行妨害だ。いずれにせよ佐伯は輪島の人間関係など知らないし、知った所で関係ないとするだろう。唯、相手の立場をはばからない強引な態度を輪島はゆるせなかった。ビルの一階では由美子が悲壮な顔で立ち尽くしていた。
「納期は、クライアント…・ああどうすれば。」心中穏やかではではない。山下もその横でどうすれば良いものかと思案に暮れるばかりであった。
輪島は署に戻りこの事を課長に訴えた。権田課長は課内のチームワークの乱れを正す事も踏まえて緊急ミーティングを行った。そのミーティングの中心課題は勿論今回の佐伯の取った行動についてだった。
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