0人が本棚に入れています
本棚に追加
権田は佐伯チームと輪島チームのチームワークが全く取れていない事を指摘した。佐伯は輪島と同じ捜査を独自に行っていたのだった。同じ捜査を行った佐伯の行動は悪いがそれは輪島も佐伯とコミュニケーションを取らない為に生じた事だとし、捜査に個人プレーは許されないし、情は必要無いと注意した。
捜査協力者の友人から甘くするということはあってはならない事だと注意した。由美子には申し訳ないが、潔白が証明されるまでデータを調査するのは仕方ないことだろう。
一方その日の夜、山下と由美子は由美子の会社近くの居酒屋にいた。今後どうして行くべきか途方に暮れる由美子をどう励ませば良いのか。今度一緒に食事でもがこんな形で実現しようとは思いもしなかった。
「とにかく嵐が過ぎるのを待とう。」
「貴方は気楽な稼業かも知れないけど、こっちは沢山のクライアントを抱えているの。だいたい押収されたデータは何時戻ってくるの?」
「いつ戻ってくるのって言われても、ものがデータだけに警察がどんな解析調査をするかによって解析時間も違ってくるだろうし…。」
こんなやりとりが続いたあと暫く沈黙が続く、といった具合だった。
輪島からの話だと(有)ランスロットのサイトはウイルスによってある程度破壊されていたという事だった。ウイルスの存在が悪なのかサイトが悪なのかと聞けば勿論ウイルスと答える所だろうが、人によってはウイルスを呼び込んだのがサイトだと考えられるわけで、佐伯の判断が間違っているとは言い難い。由美子は自暴自棄状態で愚痴の連発、これで発散してもらえればと山下は思った。しかし、自殺現場に居合わせた自分といい、今回のサイトの件といい同じ大学同期が同じ事件に巻き込まれようとは、これを偶然と片づける事はできないなと感じ始めていた。
最初のコメントを投稿しよう!