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タイミング良く宮司らしき人が3人に近づいてきた。彩世の父親だった。宮司は2人に近づき一礼した。山下と由美子も一礼して返した。そして
「彩世、お客さんかい。」彩世に聞いた。
「取材の人。この近くの露天風呂の取材に来たそうです。」
すかさず山下は名刺を宮司に差し出し挨拶した。
「山下と申します。彩世さんにこの神社の事や温泉の事を聞かせて頂きました。御仕事の邪魔をして申し訳ありません。それから、あっちにいるのがアシスタントの坂上です。」
由美子は少し離れた位置でしきりに撮影しているジェスチャーをした。最近の携帯はカメラの代わりもするし画像を即送信も出来る。「ははは。お気になさらず。もう温泉には行かれましたか。」「いいえ、これからです。」「何でしたら娘に温泉まで案内させましょう。
彩世、案内してさしあげなさい。」
「おや、この巫女さんは娘さんだったのですね。でもそこまでして頂くと…・。」
「いえいえ。この子もこの辺境の地で退屈しております。都会からの参拝者様の話を聞くのは楽しみでしょう。まあしっかり取材してください。」
と言い残し一礼して去っていった。
山下と由美子は彩世に案内され、神社よりも更に上へと登っていった。暫く山道を歩いて行くと小さな建物が見えてきた。そこから見る景色、なかなかの見晴らしだった。山下も由美子もこの絶景に心洗われた。陽は沈み辺りは薄暗くなり始めていた。3人は露天風呂に入った。混浴だったので山下は彩世、由美子と離れた位置に浸かっていた。由美子は夕暮れの絶景を見ながらゆったりと温泉を堪能していた。由美子の目の前には彩世が浸かっていた。この時始めて少女らしい笑顔をみせた。
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