第1話 日常 ~現在~

2/3
前へ
/3ページ
次へ
------------------------2015年4月----------------------- 「伊織~遅ーい!!おいてっちゃうよ!!」 玄関から聞こえてくる友達の声。毎日同じことを繰り返せる私たちは、 それだけで幸せだ…。 「待って待って!!あと少し!1分だけだから!!」 「伊織、涼介がネクタイ忘れてるみたい!!持って行ってあげて!」 相変わらずのお母さんの声。涼介は私の双子の兄。 「えー…。今日入学式だよ?涼はそんなバカな忘れもんしてるの?  もーしょうがないなー…。」 自分の部屋を出て階段を下りリビングの扉の前でとまる。 「あと20秒かなー?なっちゃうよー?」 玄関からこちらを笑いながら見つめてくる。 「もー!分かってるよーだ!」   「はい!よろしくね!」 お母さんに渡されたネクタイと鞄を手にもち玄関まで小走り。 「お待たせ!!」  「おお!ジャスト!お疲れ~。」 小馬鹿にしたような笑みを浮かべ右手の親指を立てる。 「智恵ちゃん毎日伊織のためにごめんね。高校に入るってのに  こんなんだけどこれからもよろしくね?」 お母さんはうすら心配をしているのか、苦笑いで友達を―宮田 智恵をみる。 智恵は小学校からの付き合いでこんな私のそばにずーっといてくれている。 これから先も少なくとも三年間は一緒だ。 「いえいえ!こちらこそ!」 私に対する態度と打って変わって丁寧なお辞儀まで加えてる。 「お母さん!!やめてよね!恥ずかしい!行ってきます!!」 高校指定の靴(ローファー)を履き玄関の扉を押す。 毎日見た景色。明るい日差し。横切る自転車。 ただ一つ新しいものが芽生えていた…今日一日への好奇心。 義務教育が終わり新しい学校、仲間、授業、環境。 すべての希望が膨らんでいく。 予想できない楽しみを、悲しみを、たくさんの感情を迎えに。 --私たちは未来を見て今を生きてるから。
/3ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加