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------------------------2015年4月-----------------------
「伊織~遅ーい!!おいてっちゃうよ!!」
玄関から聞こえてくる友達の声。毎日同じことを繰り返せる私たちは、
それだけで幸せだ…。
「待って待って!!あと少し!1分だけだから!!」
「伊織、涼介がネクタイ忘れてるみたい!!持って行ってあげて!」
相変わらずのお母さんの声。涼介は私の双子の兄。
「えー…。今日入学式だよ?涼はそんなバカな忘れもんしてるの?
もーしょうがないなー…。」
自分の部屋を出て階段を下りリビングの扉の前でとまる。
「あと20秒かなー?なっちゃうよー?」
玄関からこちらを笑いながら見つめてくる。
「もー!分かってるよーだ!」 「はい!よろしくね!」
お母さんに渡されたネクタイと鞄を手にもち玄関まで小走り。
「お待たせ!!」 「おお!ジャスト!お疲れ~。」
小馬鹿にしたような笑みを浮かべ右手の親指を立てる。
「智恵ちゃん毎日伊織のためにごめんね。高校に入るってのに
こんなんだけどこれからもよろしくね?」
お母さんはうすら心配をしているのか、苦笑いで友達を―宮田 智恵をみる。
智恵は小学校からの付き合いでこんな私のそばにずーっといてくれている。
これから先も少なくとも三年間は一緒だ。
「いえいえ!こちらこそ!」
私に対する態度と打って変わって丁寧なお辞儀まで加えてる。
「お母さん!!やめてよね!恥ずかしい!行ってきます!!」
高校指定の靴(ローファー)を履き玄関の扉を押す。
毎日見た景色。明るい日差し。横切る自転車。
ただ一つ新しいものが芽生えていた…今日一日への好奇心。
義務教育が終わり新しい学校、仲間、授業、環境。
すべての希望が膨らんでいく。
予想できない楽しみを、悲しみを、たくさんの感情を迎えに。
--私たちは未来を見て今を生きてるから。
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