第1話

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所長の隣にりくのデスクが用意された。 そこに座ったりくは堂々として『若きエース』の風格たっぷりだ。 (この人とは何かある) 直感的にそう感じていた。 (何だろう?) (一目惚れ…ぇ?) まさかね。 まだ一言も言葉を交わしていないし、視線すら合っていない。 それなのに気になる。 「……!」 「……さん!」 「林さん!」 「は、い?はい!」 「契約書出来ました。不備は無いと思いますけど、よろしくお願いします。 …珍しいですね、 林さんがぼんやりしているなんて」 新人営業員の太田さんが、うれしそうに契約書を持ってきた。 「ぼんやりしてました?ごめんなさい。 契約おめでとう。がんばったんだ」 遠くをじっと見つめ、立ち尽くす太田さんに声をかけた。 目線の先には、所長と打ち合わせをするりくの姿がある。
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