第1話

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軽く咳払いをしてりくと向き合う。 「お帰りなさい。早かったんですね。 ひとり?所長は?」 得意先回りに同行したわりに、随分と早いお帰りだ。 しかもひとり。 「お得意様はキャンセル入っちゃって。明日になりました。 所長は支社に行きましたよ。」 「支社ね…。」 美味しそうに煙を吐きながらまた笑う。 そして…また反則。 「何独り言いってたんですか?」 「お天気いいな~って思って。」 「え?雷鳴ってますけど?」 「そ、そうね。そうだけど。さっきまでは良かったの」 「そう?」 「そう。」 煙草を吸うりくの呼吸と雷鳴と。 きゅるる…… 私のお腹の虫。 お腹を押さえて言った。 「聞こえた?」 「うん。聞こえた」
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