第二話

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「お前ら、なにをやった」不良の輪を目で一周する。  虎流尋問術その一、「まずは、アバウトにふわっと訊ねて、相手の想像力をかき立てる」。質問は限定しない。こいつはなにが聞きたいんだろう、そもそもこいつらはいったい何者なのだろうと勝手に推測させて、引き出す情報量を増やす。  だれもとも視線が通わない。口を開く気配がない。「やってない」とわめくわけでも「知らない」としらを切るわけでもない。だんまりは、誰かに支配されてなにかをしている人間の典型的な反応だ。そしてこの反応から、支配者がこいつらだけの支配者ではないとわかる。  悪ガキどもの支配者が与えるのはご褒美だけとは限らないし、支配者は総じて自らの手で罰するのをきらう。こいつらは、支配ヒエラルヒーの最下位に近い。 「よお、倉敷君、どうなんだよ」  こいつらの頭の中で今、俺たちが何者なのか推測を確立しようとしているはずだ。追い詰められた状態の推測は、たいていが自分に都合のいいように弾き出すものだ。  こいつらのそれは、「支配者に守ってもらえること」だろう。俺たちが支配者の敵である場合(実際そうなんだが、それじゃあやりにくい)とにかくこの場をやり過ごせれば支配者がなんとかしてくれる、という状況、その確立を砕いて、最悪の推測を促してやる。 「口で訊ねてるうちに答えるほうが利口だぞ。自首したほうが罪が軽いっつうのは、人類の総意だな。自首には反省が込められているし、なにより俺たちや『あの人』の手がわずらわされない」  俺たちが支配ヒエラルキーの上位の人間であることをほのめかすと、倉敷の呼吸が止まった。俺たちが「必殺仕置き人」になった記念すべき瞬間である。
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