第二話

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「携帯番号はわかってるんだけど、いる?」と虎が口をはさむ。 『一応もらおうかな』  虎が番号を読み上げる声に被せるように、『出た出た』といっそう声が明るくなった。 『前科は恐喝、窃盗……覚取では捕まってないのね、遠野守、四十六才、バツイチ、ニ、うっそ、三回離婚してるわ。顔写真と全身写真はニャンちゃんのラップトップに送ったから。恒久会系列の元構成員、現住所は隣の県ってことになってるけど、現在地は、そこから五キロくらい先にいる。うーんと、アパートっぽいけど……アパートだわ、かすみ荘の二号室。このメーターの回り方は起きてるね、早起きー。ん? どこに電話かけてんのかなあ……女です。木村のぞみさん二十三才、既婚者なんですけど旦那さん役所勤めなんですけど、ちょっと待って、会話が聞ーくーにー堪ーえーなーいー』  設楽あらため遠野を哀れむほどの情報に、思わず「なにしてんだよ……」と口走ったのがいけなかった。 『朝もはよからテレフォンセックス』 「…………」 『三回も結婚して、五人子供がいて、もうなにしてんの、この人。同じ男としてはむしろ尊敬すべき? あ、この一ヶ月の行動パターンがでたよ。これも送っとく。それにしても、ポカリ買いすぎ。ねえ、ポカリ風呂でもやってんの? 若い女の子が好きなんだね。女の子たちのカード明細から察するにそうとう派手好み。しかもDカップ以上限定につき! むかつくなあ、腹いせに預金残高ゼロにしとく? あー、五才でお母さん亡くしてるんだ……だからおっぱい星人なのか。かわいそうだから、端末の電話帳いじるだけにしておこう。ついでになんか登録しとく? しといた。ニャンちゃんの三台目の端末で〈なのは〉、五台目で〈板橋〉ね。終わったら言って、消しとくから。あらら、お父さんも一昨年他界してる。葬式に出た形跡はなし。妹は他県で家族四人幸せに暮らしてる模様、遠野とは疎遠。あとなにが知りたい?』  もうなにも知りたくない。
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