第二話

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「だけかどうかはしらない。利用されていたのは間違いないだろうけど」 「利用されてただけだったら、あいつらは悪くない? 悪いのは利用したやつだけ?」 「それは違う」  即答していた。  ほんとうのところは、「そうだ。だから復讐なんて不毛なことはやめよう」って言いたかったし、楓のために言ってやるべきだったのかもしれない。やつらを殺したいと勇む楓に油を注ぐ言葉だとわかっていて、俺は、俺の動く口を止められない。 「あいつらにも、背負ってもらいたい罪がある。お前の友達が苦しんだぶん、友達が苦しんで楓が悲しんだぶん」ほかの余罪については俺ごときには許容オーバーだから、取り急ぎこれだけ、「『あんなことしなければよかった』って死ぬほど後悔させてやる」 「死ぬほど……」と呟いて浮かべた楓の安堵の表情は、考えつくかぎりの意味、そのどれにもあてはまるようだった。だから、もっとも都合のいい解釈を握りしめて、俺はうなずく。 「死ぬほど」 「つまり、死なせはしない」虎が投げやりに俺の言葉を横からかっさらった。「――ってか? じゃあどうすんだよ、めんどくせえな」  虎スキャンを持たされる件のせいで、虎の腹の虫はいまだ大合唱中のようだ。ただでさえ鋭い目尻を針にして、容赦なく俺を刺してくる。 「男の尊厳をくじく。目には目を歯には歯をってやつだよ」  虎の瞳に、さっと好奇心の光が走ったのを俺は見逃さなかった。すかさず人差し指で虎を呼ぶ。「えげつない、良い方法がある。ちょっと耳貸せ」  楓が落ち着かない視線をちらちら俺と虎に向けてくるが、ここから先は女人禁制だ。男の尊厳にかかわるもんで、どうか大目にみてほしい。
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