第二話

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「てめえ……殺すぞ」 「虎。メモリーカード」と手を出すと、虎は殺気むんむんに楓を睨みながら端末ごと俺の手に乗せた。 「臆病者にあたしは殺されない」  端末のスリープを解除すると、ロック画面が現れた。怒りでわなわなしている虎の指を拝借して指紋認証を解除する。 「その減らず口に『お願いだから殺してください』って言わせてやるよ」 「拷問の鍛錬つんでるのは、あんたたちだけじゃない」  端末に男の尊厳データが残っていないことを確認して、メモリーカードを抜く。ダッシュボードからニッパーを取りだして、 「程度の違いだよ。忍の芋臭い拷問をみれば、だいたい察しがつあああああああああああああ!」  渇いた切断音を虎の絶叫が打ち消した。 「雪! おまえなにやってんだよ!」 「なにって」ぱちんぱちんぱちん。「メモリーカードを細かく切ってるの」  返せ! と、虎が端末をふんだくる。 「あぁぁ……おれの大事なコレクションが……ふざけんなよ! 端末のバックアップもとってあったんだぞ!」 「バックアップだったらラップトップでもしてんだろ」 「そういう問題じゃねえ! だいたい脅迫のネタなくしちゃって、ドレッド倉敷君はどうすんだよ」 「どうもしねえよ」窓を開けて、粉微塵になったプラスチック片を風に流す。「脅迫もお仕置きももう済んだ。あとはあいつら次第だろ」 「だからっておま……なにもメモリーカードじたい粉砕することないだろ……データ消すだけでいいじゃんよお……」  あ。
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