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「てめえ……殺すぞ」
「虎。メモリーカード」と手を出すと、虎は殺気むんむんに楓を睨みながら端末ごと俺の手に乗せた。
「臆病者にあたしは殺されない」
端末のスリープを解除すると、ロック画面が現れた。怒りでわなわなしている虎の指を拝借して指紋認証を解除する。
「その減らず口に『お願いだから殺してください』って言わせてやるよ」
「拷問の鍛錬つんでるのは、あんたたちだけじゃない」
端末に男の尊厳データが残っていないことを確認して、メモリーカードを抜く。ダッシュボードからニッパーを取りだして、
「程度の違いだよ。忍の芋臭い拷問をみれば、だいたい察しがつあああああああああああああ!」
渇いた切断音を虎の絶叫が打ち消した。
「雪! おまえなにやってんだよ!」
「なにって」ぱちんぱちんぱちん。「メモリーカードを細かく切ってるの」
返せ! と、虎が端末をふんだくる。
「あぁぁ……おれの大事なコレクションが……ふざけんなよ! 端末のバックアップもとってあったんだぞ!」
「バックアップだったらラップトップでもしてんだろ」
「そういう問題じゃねえ! だいたい脅迫のネタなくしちゃって、ドレッド倉敷君はどうすんだよ」
「どうもしねえよ」窓を開けて、粉微塵になったプラスチック片を風に流す。「脅迫もお仕置きももう済んだ。あとはあいつら次第だろ」
「だからっておま……なにもメモリーカードじたい粉砕することないだろ……データ消すだけでいいじゃんよお……」
あ。
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