第二話

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 設楽改め遠野と接触する。だがどうやって。いやそんなことより飯だ飯。  シスマがまだ開店していない時刻である。大回りして、そのコンビニがローサンもしくはローンソでないことを祈りつつ、隣町まで足を伸ばした。  祈りが通じ、おなじみの青い看板が目に入ったときには、虎とふたりで小さくガッツポーズしていた。ハイタッチ一歩手前だった。コンビニエンスストアは偉大である。 「おやつは一個までな」  買い物かごのハーゲンダッツ五個の上に、そっとハムカツサンドを置く楓にそう告げると、楓は嬉しそうにはにかんで菓子の棚へ急ぐ。殺すなどと息巻いていてもやっぱ子供だなあ、なんて微笑ましく見送っていたのに、背後からの不機嫌な声にぶちこわされた。 「まてまてまて。なんであんなやつの飯なんか買ってやろうとしてんだよ」 「いやいやいや。おまえはなに買おうとしてんだよ」 「レディーボーデン」虎は誇らしげに言い放ち、かごの中にカップアイスを落とす。三つもだ。「ストロベリー味」 「キミは飯を買いなさい飯を」 「うるさいな。世の中にはエメラルドマウンテンだけで生きてるやつだっているっていうのに」 「そいつの頭がおかしいだけだ、気にするな」 「つぎ、たすくのこと悪く言ったら怒るからな」  ああ……そう。
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