第二話

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 食わなかったら俺が食うからと、紅鮭握りをなんとか虎に買い与え、楓にはハムカツサンドとチョコあんぱん、俺は焼肉弁当を買って民宿への帰路につく。 「楓はどこに泊まってんの」  このまま送ってやろうと声をかけると、助手席で、えっと……と言いあぐねる。 「まっさか、宿無しい?」  後部座席から楽しげな声が上がる。それだけで飽き足らず、宿無しのうたとやらまで作詞作曲し始める。  二十五歳の皮をかぶった小学生のイジメに、小さく縮こまって耐える楓があまりに不憫で、 「俺らが泊まってるとこだったら、まだ部屋が余ってると思うぞ」  未来まで照らせそうな明るさが顔にともったのも束の間、すぐにまた輝きがしぼんだ。  赤信号で停車する。  楓は片ケツをあげ、そろそろとポケットに手を伸ばす。くまのキャラクターがプリントされた小銭入れを開け、 「やっぱ、いいや……」と蚊の鳴くような声で呟いた。  かぱっとあいた、がま口の中には、茶色と金色の穴あき硬貨の二枚しかなかった。
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