『〝終わりの日〟の終わり』

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  高校を卒業してからすぐに地元を離れて七年。  二〇〇九年の夏。  七月三十一日という人生で一番嫌な日に、中学校の同窓会をやるというので、地元の友達に半ば強引に呼び戻された。  強引に……というのは、これまでも、例えば通例である成人式の後の同窓会。その後にも何度か話が上がった同窓会も全部パスしたからだ。それどころか、一度も地元には帰っていない。  高校を卒業して、逃げるように地元を離れてそれっきり。当時はほとんど毎日顔を合わせていた二人の友達にも会ってはいない。  そんな人間をどうにか呼ぼうとした苦肉の策だったのだろう。 「お前の大好きな夏美さんが、呑みに来いって。働いてる居酒屋のクーポンくれたから帰って来いよ」  そんな鶴の一声となった電話が来たのが一ヶ月前だ。金額を聞いてみれば千円オフの券だと言う。大事なのは金額では無く、〝誰が〟呼んでいるかだ。  きっとまだ地元にいると思っているはずだ。じゃなければ、そんな金額のクーポンで呼ぶ人ではない。  『夏美さん』……懐かしいなぁとだけ思って、それ以上は思い出さがないようにした。  ユージも面識のある、仲良くしてくれた三つ年上の上の女の先輩なのだが、わけあって足を向けて寝れないくらいの恩がある。  離れてからずっと、一つだけ聞いてみたい事があって、その誘いを受けることにした。  翌日、『いいよ』とだけ返信をして、同窓会の詳細が来たのが昨日。実に約一月もの間、誘ったくせに放置という、旧知の友人らしいといえばらしい対応だった。  
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