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「こんばんは。あら、私達はお二人が店に入ってきた時からいましたよ。ね? 蘭さん」
若い女性がそう老齢の女性に確認し、二人は微笑みながら杉野を見た。若い女性は紺色のジーンズに淡いピンクの柔らかそうな生地のシャツが若々しい。
ボーイッシュな程のショートヘアに色白で幼い顔立ち、そしてそこへ少し赤みの強い口紅が愛らしさを際立たせていた。
老齢の女性の方は歳こそ多分に重ねているようだが背中は丸まっておらず、肩まである髪はきれいに束ねられている。
ブラウンを貴重として全体的に落ち着いた色の服を気こなしており上品な印象を与えた。
「そうでしたか、これは失敬。いやぁ部下と飲みに来たのはいいですが、なにぶん男二人、話も尽きてしまいまして。
宜しかったら少しお相手願えないですかな? うちの竹下がどうしても言いまして」
「えぇ、僕を出汁に使うんすか?」
「うるさい」
「どうぞどうぞ。私達も何かあるわけではありませんし。うちのお喋りお嬢さんのお相手をして頂けるなら大歓迎ですよ」
先ほど蘭と呼ばれた老齢の女性は上品に笑いながら席を促した。
「もう蘭さん、私のどこがお喋りなのよ」
若い女性の方もコロコロと愛らしく笑いながら、杖を蘭の方へ寄せて、テーブルに座れるよう空間を空けた。
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