第55話

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 何とか隙をついて、逃げるのが上策である。  だが背後に広がる湖に、完全に退路を塞がれている状態だった。  焦燥に、下唇を噛み締める。  するとその時。  煮えた頭を冷やすように、湖上から冷たい風が吹いて来た。 「寒……っ!」  思わず小さく身震いをする。  そこではっと顔を上げた。  水は凍る。  湖が凍ってしまえば、そこは地上と変わらないのでないか。  逃げ道がないなら、また作れば良いのだ。  私は決然と顔を上げると、一触即発の緊張感に包まれるギヴァレー達を眺め遣った。  そして彼等に気付かれないように、小さく術言を唱える。 「グラキエスオーム……!」  湖全体を凍り付かせる為に、かかる理力と時間が判らない。  せめて表面だけでも凍結してくれれば、歩いて向こう側に渡れるはずだ。
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