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何とか隙をついて、逃げるのが上策である。
だが背後に広がる湖に、完全に退路を塞がれている状態だった。
焦燥に、下唇を噛み締める。
するとその時。
煮えた頭を冷やすように、湖上から冷たい風が吹いて来た。
「寒……っ!」
思わず小さく身震いをする。
そこではっと顔を上げた。
水は凍る。
湖が凍ってしまえば、そこは地上と変わらないのでないか。
逃げ道がないなら、また作れば良いのだ。
私は決然と顔を上げると、一触即発の緊張感に包まれるギヴァレー達を眺め遣った。
そして彼等に気付かれないように、小さく術言を唱える。
「グラキエスオーム……!」
湖全体を凍り付かせる為に、かかる理力と時間が判らない。
せめて表面だけでも凍結してくれれば、歩いて向こう側に渡れるはずだ。
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