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「エドモンド・ギヴァレー準公爵。お帰りになったんじゃなかったんですか……?」
地を這うような低い声が、レオニールの形の良い唇から発せられる。
言葉遣いは丁寧だが、その目と行動には一切の敬意が感じられなかった。
右手は紳士の髪を掴んだままであるし、彼を見る眼差しはまるで虫を見るような酷薄さだ。
「と、とりあえず髪を放してくれないかな、レオニール君?」
髪を掴まれているので身動きが取れず、準公爵と呼ばれた紳士は尻餅を着いた態勢のままだった。
私はそこではっと我に返る。
準公爵といえば、我が家よりも家格が上だ。
爵位というのは男爵、子爵、伯爵、候爵、公爵の順に位階が上がって行く。
つまり彼は、私達よりも遥かに高い身分にあるのだ。
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