第6話

9/12
前へ
/750ページ
次へ
「何が面倒なんですか? そんなもの、突っぱねれば良いでしょう?」  義父の愚痴に、レオニールは淡々と返す。 「そうも行かん、奴は査察官だ。一度恨みを買うと、あの手この手で圧力を掛けて来る厄介な相手でもある」  初めて知った事なのだが、査察官とは国内の各領地を巡って不正の有無を調べる職業であるらしい。  つまり脱税や横領を調査するマルサのような立場の人だ。  その査察官であるギヴァレーは、公爵という地位にありながら領地を持たずに各地を転々としている。  それでも彼が貴族の中で最も高い地位にあるのは、不正を調査するにあたりその対象が自分よりも高い身分であった場合、強権を行使して証拠隠滅や捜査の妨害をされてしまう恐れがあるからだ。  なのでそういった妨害を受けない公爵に準じる地位に就いている。  裏を返せばその身分を利用して、ギヴァレーは誰にも邪魔をされずに捜査する事が出来るのだ。  そして彼はその職業柄、各領主のありとあらゆる弱味を握っている最高位の貴族という事になる。
/750ページ

最初のコメントを投稿しよう!

760人が本棚に入れています
本棚に追加