第6話

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 後ろ暗い所のある連中は、誰も逆らえないだろう。  敵に回すと最も厄介な手合いである。 「勿論セシリアを差し出す気はないが、今後警戒は怠らない方がいい。奴にはあらゆる方面にコネがあるからな」  疲労を滲ませた嘆息をひとつ零し、義父は咎めるような眼差しでレオニールを流し見た。 「もっと上手く立ち回ってくれればこんな面倒事は避けられたものを……」  思わずといった風にぽつりと零す。  その独白を耳にした瞬間、レオニールの眉根がくっと寄せられた。  下唇を噛み締めて、義父の顔を睨め上げる。  レオニールの傍らに立っていた私は、彼の中で急速に膨らんで行く怒りを感じ取った。  ピリピリと肌を刺すような尖った空気が、全身から発せられている。
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