第6話

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 無理もないと思う。  今まで自分を一切顧みる事もせず殆ど関わる事もしなかった実父が、いざ仕事を任せるようになったら今度は過剰な期待をかけて来るのだ。  優しい言葉のひとつ、労いの言葉のひとつを掛けるでもなく、口を開けは拒絶や叱責ばかり。  ここは親ではあれば、「よく義妹を守った」 と褒めてやるべき所だろう。  義父に悪気はなく、レオニールを責めるつもりも毛頭なく、つい愚痴を零してしまったという事は中身が元社会人である私にはよく判っていた。  追い詰められて、でも逃げる事を許されない立場に置かれて出てしまった小さな弱音に過ぎない。  だが、レオニールには分からないだろう。  はらはらとしながら、きゅっと唇を真一文字に引き結んだレオニールを窺い見る。  私のせいで、また傷つけてしまった。  幾ら大人びていて実年齢よりもしっかりしているように見えても、彼は未だ子供なのだ。 「お兄様が来なかったら、わたしは多分あのままギヴァレー様に連れて行かれていましたわ!」  そして気がつくと、そんな言葉が私の口から飛び出していた。
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