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手放しで褒めてやりたい。
その衝動のまま、レオニールの手を取った。
「助けてくれてありがとう!」
潰れた剣ダコでいびつな掌を両手で包み、心からの感謝を伝える。
するとレオニールは一瞬、虚を衝かれたような顔をした。
「セシル……」
しかし直ぐに目許を和らげると、
「セシルぅううう!」
がばりとばかりに上から覆い被さって来る。
私の背に腕を回し、渾身の力で抱き締めた。
ミシミシゴキッ!
「ぷぎゃっ!」
「放しなさいレオっ!――セシィが白目だからっ! 死んじゃうから!」
私の背骨が奏でる終焉の音を合図に、また急速に意識が遠退いて行く。
義父の悲鳴とレオニールの狼狽した声を聞いたのを最後に、そのままぷっつりと途絶えたのだった。
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