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「ただいま戻りました、お姉様……」
ソルヴァンセス領で購入した珍しい工芸品を手に、私は扉をノックした。
重く閉ざされた扉の向こうには、子供部屋がある。
私は返事を待たずにノブに手を掛けると、音もなくそれを開いた。
埃と黴の匂いが溢れ出して来る。
「今日はお姉様にお土産があるのですよ」
分厚い遮光カーテンの隙間から、か細い陽光が射し込んで来た。
それに目を灼かれながらも、躊躇う事なく歩を進めて行く。
部屋の床には埃が堆積しており、歩く度にぶわりと粉雪のように舞い上がった。
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