第二節

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 ――――………! 「………ぇ…!?」 「…………………」  青年と少女を囲むように半円に陣を取る"ヤツ等"は、喉の奥で唸りをあげながらギラついた目を二人に向けていた。 「ヴォルフの群…! うっわぁ~…完っ全に囲まれちゃってるわねコレ…」  濃い灰色の体毛に被われた赤目の魔獣の群に、少女は分かり易く動揺を見せた。 「…………………」  青年はもう一度小さく溜め息をついて、手にしている鞘に収まったままの剣を軽く持ち上げ、それを胸の前で構える。  同時に、青年はジロリと後方の少女へ横目で視線を投げ、少女はその視線の示している彼の言葉を悟って口を開いた。 「あ、アタシのせい!? ま、まぁ確かに大声上げたのはアタシだけど…。で、でもそれはアンタが……って危ないっ!!」  少女の鋭い声が飛ぶ。  青年が視線を外したのを捉えた一匹が、軽い助走を経て彼へと飛びかかってきたのだ。  …………だが…。  ――――――…!!! 「わ……!!」  悲鳴を上げたのは、その飛びかかった一匹の方であった。  その牙が彼へと届くと思えたその一瞬、青年は素早く鞘を閃かせ、ソイツの側頭部を殴りつけ、吹き飛ばしたのだった。  体勢を崩したまま地面に叩きつけられるソイツを合図に、他の獣達が牙を剥き、青年に向けて一斉に迫る。  だが、青年はそれにも全く動じた素振りは見せなかった。  他よりも一瞬早く動いていた一匹を、今度は回し蹴りで文字通り一蹴し、続いて足に食らいつこうとしてきた二匹を横から薙払うように蹴り飛ばす。  左右からタイミングを計ったかのように飛びかかる二匹を、目にも留まらぬ速さで閃かせた鞘で叩き落とし、死角からの奇襲をかけようとした一匹の動きを見切り、その顎に肘鉄を叩き込み、中空で一瞬止まったその身体に渾身の蹴りを放つのだった。 「す……ご…っ!」  その無駄の無い動きを以て獣達を蹴散らす青年に、少女はポツリと無意識に呟いていた。
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