第二節

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 青年は静かに蹴散らした獣達を見下ろしていた。  先ほどまでの勢いはどこへ行ったのか獣達は一様に身体を後方へと傾け、完全な逃げ腰となっている。  ふと、青年は一歩足を前に踏み出した。  するとどうだ、獣達はそれと全く同時に一歩下がるではないか。  完全に戦意を失っている証拠だ、それを見た青年はスゥッと目を細め、そして次の瞬間―――。  ――――ズンッ!!!!  ―――――っっ!!!!!!  大きく足を踏み出すのと同時に、手にしていた鞘を渾身の力で地面へ突き立てたのだった。  地には小さくひび割れたような跡ができ、それによる衝撃は一瞬だけではあるが大地を本当に揺らした。  先の戦闘で見せた精密な動きとは全く違う豪快な威嚇。  もうもうと土埃が立ち込める中でゆっくりと顔を上げた青年の視界には、もう既に獣達の姿はどこにもありはしなかった…。 「……………」  青年はヤレヤレと言いたげに地に突き立てた鞘を引き抜いて、身体を直立に戻すのだった。 「すっ…ごぉぉ~~~い!!!!」 「………―――!!」  青年の身体が反応するよりも早く、その背中にドッと鈍い衝撃が走る。  衝撃を踏ん張る事で殺し、同時に愛剣の柄を握って後方へ首を向ける青年。 「………―――?」  その視界にまるで子どものようなキラキラした目をしてこちらを見上げる少女が自分の背中に抱きついていて、青年はその様子に思わず警戒を解いて小首を傾げた。 「スゴいスゴいスゴい!! アンタむちゃくちゃ強いんだね!!」 「…………。……?」  ハシャぐ少女に抱きつかれた青年はしばらくの間、どうしたものかと思案するのだった。
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