第三節

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 少年はうずくまる母を揺すり、泣き声をあげていた。  少年の母は足を押さえ、その痛みに唸りを上げている。  その二人に迫るは、荒々しい狂気に燃える瞳をした獣達。  その狂気は息遣いに現れ、鋭い牙が覗く口からは、血肉を欲する欲望が唾液となって地に滴り落ちる。  ジリジリと、恐怖する目の前の獲物の表情を楽しむかのようにゆっくりと距離を詰める狂獣…。  少年が目をギュッと瞑り、それを合図と言わんばかりに一斉に飛びかかる無数の牙は……。  ――――――――――!!!!  唐突に割り込んだ影と、その影の繰り出した一撃を以て、呆気なく砕かれた。  弾き飛ばされ、地面に不規則な順番で叩きつけられる獣達。  その獣達の悲鳴に目を開く少年は、迫る牙の代わりに映る自分と母の前に現れた黒服の青年の背中を見詰めるのだった。
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