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―――……………
「!」
何かが消える感覚を、青年は感じ取った。
それは本当に感覚的なモノで、簡単に言えば自分を囲む『幕』が取り払われたような、そんな感覚だった。
「良かった、無事だった!」
「!」
青年が身に感じたその感覚を探るように見回していた視界に、こちらへと駆けてくる少女が現れる。
少女、クーは青年の服装が変わっていることに一瞬ばかり目を見張ったが、それには触れず彼の数歩先で足を止めた。
「……………」
青年の何かを案じるかのような視線に、クーは眉を少し寄せるも口元に笑みを浮かべて頷く。
「おばあちゃ……婆様なら大丈夫。結界を解かせて、今は落ち着いてる」
言い直し、もう一度笑みを浮かべた彼女の目元は、まだ少し潤んで赤らんでいる。
青年はクーの言葉に、自身が感じていた感覚の正体を知ったことの納得と、フリュールの安否を確認出来たことの安堵に、吊り上げていた眉を下げて小さく息をついた。
「んぁ? 結界消えた?」
「!!」
そんな彼の僅かに緩んだ表情が、一瞬にして険しくなる。
同時に、傍らにいたクーも青年の真横に身体を引き、その赤みが残る目をキッと鋭くした。
身構える二人の前に、高く上った月の光を背負って、男は銀色の篭手でその濃い灰色の斬バラ頭を乱暴に掻きながら歩み寄ってきた。
「んぉ? こりゃ…どういう状況だぃ? オレっちの兄弟共がやられてんだけど…?」
殆ど上裸に近い軽鎧を纏い、少しクセのある喋り方をするその男は腕組みし、本人からすれば予想外と言えるこの状況の理解に努めるように顔を渋らせる。
その大袈裟に傾けられた頭には、先程の獣達、そして、青年の隣で身構える彼女と同じ、濃い灰色の毛に被われた獣の耳があった。
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