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ザンナはコキコキと首を鳴らし、その少し気怠げな赤い瞳を細くした。
その表情は相変わらず狂暴な笑みが張り付いていて、クーはその様子に恐怖を覚えて身を固くした。
だが、それでも、彼女の怒りはその恐怖を僅かに越えていた。
震える唇から絞り出すように、ザンナへと声を上げた。
「結界魔術は、攻撃魔術と違って術者とリンクしてる。その結界を無理矢理破るってことは…術者の身体を無理矢理通り抜けると同じこと…」
クーの手が固く握られる。
ザンナは首を傾げ、彼女をただ見詰めた。
「婆様を……よくも…!」
「あぁん…? ぁあ~~…兄弟共に破らせた結界はおじょーちゃんのばぁちゃんのだったのか…? オレっち生憎、年増は趣味じゃねぇんだがなぁ」
「っ…!」
全く見当違いな解答をしたザンナに、クーの目が怒気を越えて殺気を孕み、彼へ飛びかかりそうになったとき、それよりも早く、その隣にいた青年がザンナへと駆けていた。
「え…――っ!?」
「ぁん? なんだテメ…――」
「………………」
―――――――!!!!
甲高い音が響き、青年の剣とザンナの篭手がチリチリと小さな火花を散らしていた。
「――……っとぉ…! おっかないねぇ~…!」
ザンナの目から、気怠さが消えていた。
その赤い瞳には、美しいとさえ錯覚してしまいそうな程に純粋で禍々しい殺意を宿す青い瞳が映っていた。
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