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「………………」
目覚めた青年は自分の目元が濡れている事に気付いて、指先で目元を軽く拭った。
濡れた指先を空の青にかざして、少しだけ瞳を曇らせた青年だったが、直ぐに頭を軽く振って意識を覚醒させると、自分がもたれかかっていた大木に立てかけておいた愛剣を手にして立ち上がった。
鞘の先端から柄尻に至るまで見事な純白の光沢を放つ愛剣。
木陰から完全に全体を出したと同時に青年は柄に手をかけ、剣を一気に引き抜いた。
良く晴れた空に上る陽光の光を受ける直刃(すぐは)の刀身が青年の顔を映しだしている。
青年はそこからたっぷりと一分、刃に刃こぼれが無いか、傷は無いかとじっくり検分し、そして満足したように小さく息をつくと再び刃を鞘に戻した。
―――――…。
「…………」
「ひぃぅ……っ!!?」
その瞬間、青年の右手にはまたもや抜き身の剣が握られ、静かな丘に小さな悲鳴が上がった。
後方へと半分振り返った状態で剣を突き出す青年に、その剣の刃を喉元に突きつけられる悲鳴の主は、プルプルと小刻みに震えながら両手を肩の横まで小さく上げていた。
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