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「やあ、御機嫌よう」
その男があらわれると、あたりの気温が数度ほど下がった気がした。タツオはデッキチェアから腰を浮かしそうになった。なぜ、東園寺(とうえんじ)家の別荘に情報保全部がいるのだろう。柳瀬波光(やなせなみてる)が進駐官の白い礼服姿で軽く頭をさげた。
「瑠子(るこ)さま、彩子(さいこ)さま、お招きありがとうございます」
気の強いサイコがぴしゃりといった。
「別にあなたを招待した覚えはありません。瑠子さまの御前ですし、この場は同世代の友人だけのプライベートなものです。早々にお引きとりください」
情報保全部員は焼けつくような夏の日ざしに打たれても、汗ひとつかいていない。
「野暮(やぼ)なお邪魔(じゃま)だとわかっているが、わたしもこれが仕事でね。お父上の東園寺岐山(ぎざん)将軍に、ここでの滞在と自由な捜査を許可されている。長くは時間をとらせない」
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