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「複数だ。報奨金。亡命した反政府勢力であるという記録の抹消(まっしょう)。ウルルク軍への帰還。強制収容所から親族を開放する。いろいろだな。もっともおおきな理由は最後のものだそうだ」  柳瀬波光は届けられたカクテルをうまそうに飲んだ。 「確かマンゴーはウルルクの名産品だったな。あの国のもうひとつの名物は強制収容所だ。ウルルクの裁判制度はわが日乃元とは正反対だ。疑われた者は、すべて有罪。強制収容所送りになる」  なぜ、そんなことを楽しげに話せるのか。疑われた者をすべて有罪にするのは、情報保全部も同じではないか。タツオはなんとか口ごたえをこらえた。 「この春、カイとジャンの親族が収容所送りになった。あそこは入所半年後の生存率が3割を切るので有名だ。当然だな。炎天下でわずかな水と食料しか与えず、重労働をさせる。情報保全部について悪い噂(うわさ)が流れているようだが、あの効率的な野蛮さにはとてもかなわない」
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