戦略は綿密に、隠密に。

54/59

1353人が本棚に入れています
本棚に追加
/269ページ
「タラシよりは、マシだろ」 「は?なんだよ」 事務所だということを忘れて、 仕事とは関係ないところで田中が許せない。 ショールームの薫ちゃんにちょっかいを出しながら、弥生ちゃんを狙うなんて… 「田中さん、申し訳ありませんでした…」 背中からか細い声がして、振り返れば小さい彼女が更に小さくなって見えた。 「一式を派遣のお前がもってこいよ、お前が担当だろ。メンテナンスだからって馬鹿にしてんのか?あぁん? 他の現場が詰まってるから、段取りが狂えば夜中の仕事になるんだよ。いいよなぁー、お気楽な派遣さんは!」 ヘラヘラと薄い笑みを浮かべて露骨な嫌味を言う田中。 頭を下げている弥生ちゃんの薄い肩が震えてるような気がして、いたたまれない。 「最短納期で発注かけるから。現場には、これから行って商品下げてくるよ」 音を立ててファイルを閉じて、早く田中を事務所から追い出してこの話を終わらせたかった。
/269ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1353人が本棚に入れています
本棚に追加