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☆☆☆☆☆☆Side.Nakano
休み明けの動きの鈍い朝。
「今日から来るらしいぞ 」
自分のデスクのパソコンを立ち上げてパスワードを入力していると、ニヤニヤする同期の笹野に肩を叩かれた。
「派遣だよ、ハケン。補佐で入れるって課長が言ってただろ?」
「あー…」
「可愛いといいなぁ…」
どうでもいいけど…と言葉を続ける前に、笹野の顔は更に崩れていた。
騒がしい朝のオフィス。
就業前でも外線のコールが鳴り止まない。渋々手を伸ばした受話器。朝礼の予定時刻になっても現れない所長のせいで、納期確認の電話を受けていた。
「はい、確認してから折り返します…」
人の気配に視線をあげて、肩に挟んだ受話器を落としそうになった。
所長の背中について歩く小さな後ろ姿。
艶やかな髪が朝の光に照らされて、厚みのない肩の辺りで揺れる毛先。
緊張してるのか、大きな瞳はくるくる動いていて薄い唇は柔らかく口角をあげていた。
「遅れてすまなかった。朝礼始めようか」
声を張った所長に、フロアの視線は集中した。
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