キルブレイン

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「あぁ、そんな事か。俺はゲーマーだ。数々のチームやギルドに入って他のプレイヤーが俺の足を引っ張る所を何度も見てきた。しかし、俺は一度も恨んだ事はない。逆に嬉しいくらいだ。だから、これで俺が死んだとしても俺はお前を恨まない。俺の力がお前に及ばなかっただけだと言ってやる。じゃあ……始めようか。俺の名前は一条(いちじょう)ってんだ。いざ、尋常に勝負!」   ゲーム感覚か。こんな殺し合いの世界で楽しんでいるんだな。考えた俺が馬鹿だったか。 「あぁ。俺は能吏ってんだ。よろしく頼む。初めに言っておくが、俺は剣道を昔、少しかじっていたんだ。一筋縄ではいかないからな」   俺は親父と母が離婚するまで、ずっと剣道を続けていた。母が俺の前から去った後、俺は部屋にあった竹刀を捨て、直ぐに剣道を止めた。母を忘れる為に。   昔の事を思い出していた俺と、緊張しているのか手を震わせている一条は、互いに腰に差した日本刀を抜く。互いの武器が同じの為、技量と策によって勝敗が決まる。   俺が刀を抜いて、一条の様子を伺う中、一条は日本刀を構え、俺に向かって突進してきた。 剣道では突きが禁止されている。その為、突きに対して対処する方法を知らない。それを知っての事か、一条は突きをする構えで俺に突進してくる。    さっきの俺の一言を聞いて、突きをして来た、という事は、技量では俺に絶対勝てないと一条は分かっているのだ。共に、一条が日本刀はおろか竹刀すらも握った事のない素人だという事が分かる。そうなると、一条は最初の一撃で俺を殺しにくるはずだ。時間がかかればかかる程、一条の方が不利になるからだ。 日本刀による突きは、攻撃後の隙が出来やすい。その為、突きの一撃で相手を仕留めなければ、死ぬ可能性が高まる。 一条の突きは、最初で最後の攻撃だと瞬時に悟った。
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