キルブレイン

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俺のブレインドライブとブレインコードを会社に持って行った親父が家に帰ってこなくなってから一ヶ月が過ぎた。 「……非常に残念ですが、能吏祐治(のうりゆうじ)社長は今朝、お亡くなりになりました。本当に残念です。素晴らしい社長だったのに……」 朝早く、俺が学校の支度をしていた時だった。突然、親父の会社の部長と名乗る人が家に訪ねてきた。 「……そうですか……」   俺は部長さんに一礼をすると、家の扉を閉めた。   その時、親父の生死をきちんと確認しておかなかった俺は後で後悔する事になる。 「……そうか。あの親父、死にやがったか。そうか、そうか」   俺は小さく笑った。   親父が死んだぐらいで、俺の生活には何の支障もない。親父の残した多大な財産と親父の会社以外のゲーム会社に送ったゲームプログラムの報奨金とプログラム開発の資金援助で今後の生活には困らない。高校さえ卒業すれば、就職先は、いくらでもある。 親の死に、俺は涙を一つも流す事がなかった。 次の日、ニュースで、親父が自殺した事と、ブレインドライブの開発の凍結が全世界に発表された。 これで完全に、親父のブレインドライブを実用化する夢は潰えたかに見えた。
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