彼は異世界に巻き込まれたようです。

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 この世界を不平等だと感じる人はどれだけいるだろうか。  俺たちは日常的に不平を言う。  古代ギリシアの哲学者テオフラストスという偉い人は「不平とは、あてがわれたものを不当にけなすことである」と言った。 彼によると、不平は恋人の接吻を受けながら、その愛を疑うといったものらしい。 すなわち、状況を素直に受け取らず常に悪く考えるペシミズム的な態度から生まれるのが不平なのだろう。  しかしだ、与えられたものをどう前向きに考えても不平を言いたくなる状況というものはあるはずだろう。 例えば、親友が完璧超人のどうしようもない奴であるとかはどうだろう。  思えば、俺の親友─────長門政景に出来ないことは無かった。  小学校のときは、常にリレーで一番だったし、テストの点数も全て満点、図画工作もリコーダーも難なくこなし、先生には可愛がられ、友人も多数。  もし俺が洞察力に優れていたならば、疑問を持ってもよかったかもしれないが、その当時はまだ小学生としては常識の範囲のように思われた。  同級生から尊敬の眼差しを向けられたり、可愛い女の子と交換日記をしていたことについて嫉妬に駆られて意地悪をした覚えもあったが、全く意に介さず政景はいつも俺と休み時間を共にしていた。  中学のときは、あらゆる部活に所属し活躍していたらしい。そんな芸当が可能なのか分からないが、実際に出来ていたらしい。 また、学問に関しても全て満点であった。新科目の英語の授業で発覚したことには、政景の母は裕福なイギリス人でハーフらしい。中学生という年齢を考えてみればわかるが、そういった肩書きに極端に弱いわけだ。 彼の実績と相まって極端に目立ち、モテた。
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