【盟友への道標】

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  「ふぁ~あ。や~っと終わったわぁ。」 腕を真上に伸ばし、大きく仰け反って横になる。 毎日が慌ただしく過ぎ去る中で彼―――芝山は今、人知れず溜め込んでいた書簡整理を終えた所だ。 (まだ時間あるし…少しだけ、な~。) 心中で言い訳を作り、其のまま一眠りでもしようかと思っていた 其の時。 「……じっ。」 何者かの、視線を感じた。 ご丁寧にも擬音が口に出ている。 「…え、誰?」 「むっ…ばれましたか。」 「いやいや、丸見えやけど。」 「そんなはずはありません。“かんぺき”な、ていさつだったはずです。」 「お、おぅ。」 仕方が無いと言わんばかり。 見ず知らずの人間の一室を堂々と覗き見ていた無礼は棚に上げ、たどたどしい言葉遣いが目立つ其の姿はのそりと全貌を明らかにした。 如何見ても、年端行かぬ童である。 変わっていると言えば、妙に身形が整い過ぎている所だろうか。 (何ぞまた、えらい拾いもんしはったなぁ。) 此の邸に居て、こうした出来事が増えて行くのは特に不思議ではなかった。 芝山が心中で呟く感想通り、誰もが其れを「拾い物」だと認識するのだ。  
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