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取り敢えず、訊ねる。
「何や君、迷子?何処から来たん、知っとるとこまで送ったろか?」
「むっ…」
途端、童は不機嫌を露呈した。
そして、流暢にこう言い返して来る。
「きょうから、しばらく此処がぼくの“おやしき”になります。」
「ほ~、今日からか。宜しゅうな~。」
適当な相槌で聞き流すと
「“むだなていこう”をすると、信長さまや信長さまが、だまっていませんっ!」
間も無く、やはりと言うべき此の邸の主の名が、涙混じりに綴られた。
「聞いてへんなぁ、其れ。ちゅーか、何で泣くんよ。」
「おにいさんが、あの部屋にいる“みどり”のひとは、やさしいってゆってました。」
「お兄さん…?」
「でも…みどり、ぜんぜんやさしくないっ…!」
「ちょ、誰が緑やねん。」
「ばかみどりっ!!」
「はぁ?!」
ぐす、ぐすっ。
涙声で語る童は、其の場に座り込んで泣き出してしまう。
「ばかみどり~~!!」
(何や此ん餓鬼…いやいや小姓頭!)
そう、驚く事に。
童が纏う着物とは、そう云う地位を意味していたのだ。
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