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其の邸ではかなりの高待遇。
大した作法も持たずに此の地位を持つのは、正に破格と言って良いだろう。
(どないしよ…追い出してもーたら確実に雷やな、此れ。)
「ああ…もう、済まん。」
「……。」
ぴたりと止む泣き声。
「取り敢えず、中入らん?茶でも煎れたるわ。」
「ほんとうですかっ?いただきます!」
(泣いた烏かい。)
「お兄さんっちゅーのが誰か、気になるしなぁ。」
「おにいさんは、おにいさんです。」
「名前は?」
「しりません。」
「何ぼ浅い付き合いしとんねん。…まぁ良ぇわ。」
痺れを切らした芝山が百歩譲って招き入れると、途端に童はあちこちと部屋を物色し始める。
「こら。ちゃんと此処、座りよし。」
「……。」
「何探してんの。」
「“よわみ”です。」
がしゃっ。
「なっ、何ちゅー事してんの!」
用意した茶菓子を思わず落としてしまう。
そう言えば偵察しに来たのだと豪語したのを今しがた、思い出した。
「ぼくはよく、わからないのですが…」
「分からん事ようしなや。」
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