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「信長さまが見て来いとおおせなので、てきとうにみています。」
「何考えてんねん、あん人。……はっ。」
じろり。
此処ぞとばかりに童の目が光る。
「いまのは、“むほん”です。」
「い、嫌やなぁ…俺みたいなんが信長様の高い高~い志、理解出来る訳あれへんやん。」
「……。」
「茶菓子、要らんの?」
「……みのがしてあげます。」
ほっ。
(言うても子供やしな。)
心中で胸を撫で下ろすのも束の間。
「さいしょの“ごろごろ”も、“げんてん”です。」
「ああもう、何とでも言うてや。」
自分とて雇い主は信長に違いなかった。
どう足掻いてもいつかは明るみに出るのだからと、芝山は先程の失態も隠す事を諦める。
「なまえ…」
「ん?」
「みどりは、なんとゆうのですか?」
「芝山や。」
「しばやま…」
「君は?何処の子なん?」
「…くまちよ」
「へ?熊千代て…もしかして」
「“いえ”は、ありません。」
「 」
ふと、大人びた表情を浮かべる熊千代。
芝山は少しだけ驚いて其の横顔を見つめた。
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