【盟友への道標】

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  「いまは此処が、ぼくのいえ。だからぼくは、おせわになる信長さまに、“ごおんがえし”をしているのです。」 「其れが此の、偵察?」 「はい。」 すっくと立ち上がると茶菓子を頬張るまま、窓になっている障子を僅かだけ開ける。 強く吹き抜ける風。 「…世に蔓延る“たみ”が“おやくめ”をないがしろにしてはいないか、皆がちゃんと“にこにこ”しているか…見ているのです。」 「蔓延るて。」 「みどりは…どんな“おやくめ”で此処にいるのですか?」 「芝山。」 「しばやまさん。」 「棒読みかい。まぁ良ぇわ。……此れ。」 訊ねられた芝山は机に手を伸ばすと、熊千代の膝元に幾つかの書類を並べて見せた。 「…これは…!」 「書簡言うてな、」 「“てならい”ですかっ?!」 「いや、書簡。」 「話聞きぃや。」 いちいち調子を崩して来るのも子供故だろうか。 思わず突っ込んでしまうと熊千代は、先程の涼やかな顔など無かったかの様に書簡の文字をなぞっている。 「おてがみ…?だれに届けるのですか?」 「信長様や。」 「信長さま!」  
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