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「何です、人の顔をじろじろと。」
向かいに座り一息のお茶を楽しむのは、
「や~な、安土に居った頃の忠興くん、ちぃと思い出しても~て。」
熊千代との幼名を経た、細川その人である。
「気楽で良いですね。」
「焦ってもしゃあない、手掛かり少な過ぎやって。」
「……。」
あの頃と同じ様に“ぶすくれる”細川を、芝山はただ優しく諭した。
「其れにしても意外やったなぁ、忠興くんとこにも手紙、来てたやなんて。」
「俺も驚いてます。…其れだけ、頼りが少ないんでしょうね。」
「また、そない言い方して。」
「感謝はしてます。」
「…さよか。」
「だから、寝る間も惜しんで全力でやってるじゃないですか。」
「そんで倒れたら、何も意味あれへん。氏郷くんかて、目の下にそない立派な“くま”作った忠興くん、見たないやろ。」
「…其れは…。」
「何時でも言うてや、寝たくなったら。」
「なりません。」
「何でやねん。」
「…眠れないんです。」
其処まで述べて話を切りたそうに席を立つ細川を、芝山はまた溜息混じりに追う。
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