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「以前…」
「ん?」
「以前、待庵で……俺がおかしくなるの、見てますよね。」
「ん~?」
「氏郷さんの…こころが、見えるって。」
「おぅ、あったなそんなん。」
「今度は…ひとりじゃない。」
「……。」
「十人…いや、もっとかも。とにかくずっと、話し掛けられてて。」
「何なん、其れ。」
「分かれば如何にかしてます。」
「ぇえ…其れで寝られへんの?」
「寝たら…引っ張られるんです。此の声を操る主……闇の住人に。」
「誰なんよ。」
「判らないから、苦労してるんじゃないですか。」
「何や、もどかしいな。」
ぽんぽん。
隣を歩く芝山が、ふと細川を案じて背を叩いた。
「でも此れが、氏郷さんを取り戻す手掛かりでもあるから…」
「手放せない。」
僅かだけ顔色を戻す細川が答える。
「今日は…有難うございました。芝山さん。」
「何もしとらんよ、俺は。」
「でも…会えて良かった。」
「何や、改まって言われると…照れるなぁ。」
「“向こう”の氏郷さんにも、逐一伝えてはいるけど」
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