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「誰が戦に出せって言った!!」
ガツン!
一声と共に、叩き付けられる拳。
天下一と言われた城の柱でも、天下一と謳われる男の気迫には敵わない。
空気さえもぐらりと揺らぐ様で、その場に居た兵が幾人か、慌てて其れを止めに入る。
「大殿!」
「…誰が言った!!」
「誰も言うてはおりませぬ!」
「貴方様が口にせぬ事を、誰が申し上げられましょうか!」
「…傷は。」
「深うございます。生きているのが不思議なくらいで…」
「助かるのか。」
「匙の言う事を聞かず、藤ノ間へ戻られたとしか。」
言葉を受けると、即座に男は其の部屋へ向かう。
「大殿、何をなさる御心算です!」
「勝って帰って来たんだろうが!褒める!!」
「は…」
「本人が断ったんだ、信じるしかないだろ。」
「さ、左様に。」
「誰が育てたのか、親の顔が見たくなるな。」
「は、誠に…」
「馬鹿。俺だし。」
「もっ、申し訳ございませぬ!」
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