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「信長様。」
入れ替わるように近付く兵は涼しげに。
藤ノ間の前に在る主と合流するなり、閉ざされたままの空間に視線だけを向けた。
「忠三郎か。」
「容態は。」
「来るなって言ってる。」
「…左様でしたか。」
「声、掛けて行かないのか。」
あっさりと踵を返す兵。
主の方が、思わず引き留めてしまう。
「来るなと言っているのでしょう?」
「いや、そうだけど。」
「子供ではないのですから、用があれば彼方から出向くでしょう。」
「全く、過保護ですね。」
皮肉に塗れた台詞は相変わらず、にこりと乾いた笑みだけを携えた。
「ええ~。冷た~い。」
「此方から仕掛けた戦です。しかも将を討ったのは初陣に等しい歩兵ただ一人。…最悪だと思わないのですか?」
「特には。」
「そうやって知らぬ存ぜぬを所構わず押し通すから、貴方は【うつけ】などと言われるんです。」
「え~。俺てっきり、お前がしっかりお世話しないから出てっちゃったんだと思ってた!」
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