【現邸の夢日記】

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  「その責任も含めて、出陣の許可を頂きに来た所です。」 「馬鹿。流せよ。」 「いいえ。」 兵は告げて、事態を肯定する。 「この日ノ本を統べる貴方が仰せになる事に、私が首を横に振るとでも?」 「行って何すんの。」 「取り敢えず、此度の件に関する抵抗勢力を根絶やしにします。」 「根絶やしとか!またこの子は怖~いこと言って!」 「怖~い人に育てられましたから。」 「ええ~。俺、優しいじゃん。」 「そうですね、上っ面だけ。」 「軍、要るか?」 「頂けるのなら、仰せの数で。」 「解った。三日待ってろ。」 「御面倒をお掛けして申し訳ありません。」 「与一郎はその間、謹慎にする。」 「…仰せのままに。」 「ったく、敵わないね~。」 何事も無かったように去っていく背中と 全てを拒絶して受け入れようとしない背中。 其の線の交わる所に立たされた主は、そう呟いて前髪を掻き上げた。 それを開戦の合図だと識る者は、まだ少ない。  
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