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「だからあいつが行ったんだろうが。」
「うわぁ。そない頭ごなし言われたかて、奥が見えんなら同しですわぁ。」
「いーや、理解してる。」
「誰がですのん。」
「お前の、【向こう】に居るやつ。」
「へ?」
芝山は思わず後ろを振り返った。
しんと静まる廊下。
間違い無く、二人しか居ない。
一応天井や窓際まで見てはみるが、特に異変は無い
ように、思う。
「………。」
「早く、思い出せ。」
視線を戻すと、相手は自分をやや上目に見据えている。
ただやはり
「ん、んー?」
「思い出せ。」
【自分に】と云うよりは
別の【何か】に訴えて来る感覚だった。
芝山は漠然と信長の真意を汲み取ろうとする。
五秒。
そして十秒。
しかし、
(あかん全っっ然、わからへん!!)
「え、俺に言うてます…よね?」
痺れを切らしてしまう芝山の問い掛け。
「やだ、芝山くん。他に誰か見えてんの?」
信長はいつも通りの強気な笑みを携えて答えた。
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